【読みもの】ヤクザ町長奮闘記(人口争奪編)② 2026:09:02:11:06:38
2026.09.02 【連続国実小説】

第二章 スマートシュリンク
幻想の終わり、街の現実、そして守るべきものへの最初の問い。
秋晴の人口増政策は最初こそ勢いがあった。
中央のコンサルを数社集め、金額内容を競わせた。
ゆるキャラ「トドウ君」が作られ、B級グルメ「黒スーツ焼きそば」が誕生し、
移住者補助金や子育て補助金のチラシが街中に貼られた。
有名人を呼んだ講演会は、目ん玉が飛び出るほどの金を使った。
地域おこし協力隊は10人採用されたが、仕事は後から考えるという無謀さだった。
ふるさと納税の返礼品は、町長のサイン入り米袋という奇策にまで至った。
人口を増やすんだ。
全国の街がやってるんだ。
うちもやらなきゃ負けだ。
だが、その"幻想のエンジン"は静かに、しかし確実に空回りし始めていた。
札束で人を集めても、心は集まらなかった。
◼︎ 移住者の早すぎる帰還
補助金目当てで来た移住者は、3ヶ月も経たずに荷物をまとめた。
「すみません、やっぱり前の街の方が......」
秋晴は必死に言った。
「何が不満だ、全部直す!」
移住者は首を振った。
「不満じゃないんです。ただ、戻りたい場所が向こうにあっただけで」
その言葉は、秋晴の胸に深く沈んだ。
◼︎ 協力隊の"暇すぎる日々"
地域おこし協力隊の若者たちは、役場の一角でパソコンを開いたまま固まっていた。
「町長、僕ら...何をすれば?」
「町を盛り上げろ!」
「具体的には...?」
「...祭りをやればいい。そして、それはお前らが考えるんだ」
若者たちは困惑した。町を盛り上げる以前に、町には盛り上がる余地がほとんどなかった。
◼︎町民の"諦めではなく納得"
みどり屋の老人たちは秋晴の政策について話をしていた。
「ゆるキャラ作ったらしいぞ」
「どこも作っとるしな」
「移住者補助金も出すらしい」
「どこもやっとるしな」
「人口増やすってよ」
「日本中減っとるんやから、しゃあないわ」
その声には怒りも期待もなかった。
ただ、人口増は幻想だという"静かな納得"があった。
秋晴はその空気を誤読していた。
町民は諦めてなどいなかった。
ただ、現実を受け入れているだけだった。
◼︎ 秋晴の胸に初めて生まれた"違和感"
ある夜、秋晴は役場の屋上に立っていた。
シャッター通り、空き家、点在する小集落、年20人前後の入学児童。
町の姿はどれだけ旗を振っても変わらなかった。
秋晴はつぶやいた。
「俺は何を守りたいんだ?」
その問いは、これまでの秋晴にはなかったものだった。
